星の一生の最期に新たな形態が存在
ー中性子星の誕生が引き起こすガンマ線バーストと超新星の発見ー
6. 今後に与えるインパクト
中性子星を起源とする超新星の爆発メカニズム
中性子星を中心に残す通常の超新星は、ニュートリノの効果で爆発すると
信じられています(観測的な示唆はSN 1987Aからのニュートリノ検出)。
今回のように中性子星を起源としてX線フラッシュを伴うような大爆発を引き起こすには、
ニュートリノの効果だけは不十分かもしれず、
極端に強い磁場や星の高速自転の効果で
このような爆発が起きうるかを検証する必要があります。
X線フラッシュ、弱いガンマ線バーストの頻度
今回のX線フラッシュ検出により我々はX線フラッシュ、弱いガンマ線バーストの起こる頻度が、
古典的なガンマ線バーストの頻度のおよそ100倍であることを導き出しました。
宇宙ではこのような爆発が極めて頻繁に起こっており、その宇宙全体に対する寄与は
今後考慮されるべきものです。

宇宙の化学進化への寄与
宇宙に対する寄与の一例として、宇宙の元素の進化についてとりあげます。
宇宙初期にできた星は鉄などの重元素をほとんど含んでいません。
最近の観測的研究により、宇宙初期にできた星の内部では鉄に対する亜鉛の割合が
現在よりも高かったことが示唆されています。
亜鉛はエネルギーが大きくジェットのような爆発をするときによく放出されることが分かっており、
今回の超新星の描像とよく一致します。
その頻度を考えると、今まで考えられてこなかった今回のような軽い星の大爆発が、
宇宙初期における亜鉛のような元素の進化に大きな貢献をしていたことが予想されます。

Masaomi Tanaka
Department of Astronomy, Graduate School of Science,
University of Tokyo